- 定価 3520円(本体 3200円+税10%)
- 四六判 上製 ・348ページ
- 2012年 11月 30日 刊
- ISBNコード:978-4-8269-7156-0
- 分類コード:C0011
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回復の人間学 森田療法による「生きること」の転換
心の病の原因を脳の働きや心理に求めず、病からの回復は生き方の転換から起こるとする森田療法。
その基盤をなす自然観、生命観をさぐって、自然治癒力を軸にした精神療法の全体像を提示する。
目次
まえがき
序章 現代社会と森田療法
1 現代におけるメンタルヘルスの問題
2 不安とうつの薬物療法――SSRIの登場とその批判をめぐって
3 自然治癒力と事実を知り、経験すること
Ⅰ 森田療法の人間理解
1 自然科学的モデルとその限界をめぐって
2 森田療法と精神分析――自然モデルと科学モデルの比較
森田療法とは――精神分析との比較から/二つの事実の知り方と治療論――精神分析との比較から
Ⅱ 自然論の展開
1 自然論とは
自然的思考と生態心理学/禅と自然的思考/中国における自然論――儒教と老荘思想
2 日本における自然論と自己のあり方
道元と自己のあり方/禅の心理学と森田療法/森田療法と禅――とくに入院森田療法との関連をめぐって
3 親鸞と森田療法
親鸞の苦悩をめぐって/自然法爾と森田療法
Ⅲ 森田療法の基本的枠組み――自然と反自然
1 自然の現象学――森田療法における体験とは
自然を経験することとは/心身の流動性――生活世界との関係から/生命論との関係から
2 自己論と自然
自己のあり方と自然の関係/心身自然一元論と自己の構造
3 欲望論
相即・対性――欲望と恐怖の関係から/欲望の矛盾――思想の矛盾との関係から
4 行為論――無所住心とアフォーダンス
無所住心/アフォーダンス理論/アフォーダンスと無心であること
5 森田療法の治療原理――自然論の枠組みから
森田療法で目指すこと/森田療法のメタサイコロジーと治療原理
Ⅳ 自己論――自然との関係から
1 自己と自然
自己と自然/「おのずから」と「みずから」の関係/自然、意気、諦念
2 自己をめぐって
心身自然一元論と自己の構造/意識と無意識をめぐって/二つの自己
3 自己の構造と思考、感情・欲望、行動の位置づけ
自己意識(自己の構造)=世界の関わり方への介入――受容の促進/欲望論=世界を経験すること――あるがまま/行為論=世界に直接関わること――行動の変容
Ⅴ 自己の構造ととらわれ
1 反自然的なあり方と自己の構造
自己の構造と「とらわれ」/症例から
2 とらわれの現象
とらわれ(悪循環)の構造/とらわれの様相
3 とらわれのメカニズム
精神交互作用/思想の矛盾――「べき」思考との関連から
Ⅵ 治療論の基礎
1 認識論――削ること
「削ること」とは/否定(即非)の論理――事実の知り方/否定の論理と受容の促進(コントロールの断念と価値づけの否定)
2 認識論と行為論、そして不問
「べき」思考の無力化と不問――認識論との関連から/「ふくらますこと」と不問――行為論との関係から
3 認識論と行為論の関連について
「削ること」と「ふくらますこと」のダイナミズム/「引き受けること」・「待つこと」と否定の論理/介入法の原則――対であること
Ⅶ 森田療法の介入法――治療の見取り図
1 事実を知ること・経験すること
認識論(「削ること」)をめぐって――「できないこと」と「受容の促進」/行為論(「ふくらますこと」)をめぐって/生活世界とは――作業と関係/外来森田療法とは――森田療法の構成要素をめぐって
2 治療の段階
部分から全体へ/第一段階=症状への関わりと流動する経験(治療前期/部分)/行き詰まりの時期=生活世界の広がりとゆれ/第二段階=自己のあり方をめぐって(治療後期)/実存的段階=自在な生き方とは
Ⅷ 治療の実際――治療導入
1 初回面接――何を明らかにするのか
面接の進め方/問題の読み直し(リフレイミング)/生活史との関連から
2 治療への導入
治療者の役割/クライアントをありのままに受け入れること
3 適応をめぐって――読むことと書くことから
Ⅸ 治療の実際――治療前期
1 基本的介入――悪循環と流動する経験
症状をめぐって――悪循環の打破/治療者の積極的保証
2 「削ること」と「受容の促進」
コントロールの断念――戦わないこと・待つこと・抱えること/価値づけしないこと/自分の感覚を大切にすること(五感を信じること)
3 「ふくらますこと」と「行動の変容」
行動の変容への介入の基本/気分と行動を分けること/感じから出発すること――欲望と行動を結びつけること
Ⅹ 治療の実際――行き詰まりと乗り越え
1 行き詰まりと乗り越え(中期から後期へ)
生活世界の広がりとゆれること/乗り越えパターンについて/「べき」思考と家族葛藤/「べき」思考と生の欲望
2 速やかな乗り越えパターン
3 螺旋型の乗り越えパターン
「べき」思考への介入を主とする螺旋型パターン/家族との葛藤への介入を主とする螺旋型パターン
4 転回型の乗り越えパターン
Ⅺ 治療の実際――治療後期から終了へ
1 治療後期から終了へ
乗り越えと終了/速やかな乗り越えと終了パターン/螺旋型の乗り越えと終了パターン/転回型の乗り越えと終了パターン/治療の後半から終了へ――よくなった経験を言語化し、内在化する介入
2 乗り越えの契機
乗り越えの契機〔ⅰ〕――「行動の変容」と自ら問題として引き受けること/乗り越えの契機〔ⅱ〕――「受容の促進」と自己の弱さをありのままに受け入れること
3 乗り越えられない人、乗り越えにくい人
乗り越えられない人たち/乗り越えにくい人たち
Ⅻ 治ること
1 治る期間について
2 治ることと自覚
森田が考える治ること/治ることは固定的か、変化するものか
3 ライフサイクルと治ること
ライフサイクルの観点から/成長モデルの治り方(第一段階から第二段階)/行動の変容が主である治り方(第一段階から第二段階)/自己受容モデル(第二段階から時に第三段階に近づく)
XⅢ 回復のストーリー
1 回復のストーリーを読む
テキストの解析法/ライフストーリーを読むこと
2 回復のストーリー
対人不安群/その他の群
3 回復のストーリーの様相
〔ほころび〕――危機を準備するもの――危機を内包した児童期/〔ゆれ〕――危機と長びく苦悩――苦悩する青年期から成人期/〔引き受け(収束)〕――第一の転換期――決断と行動の変容/〔自己変容〕――第二の転換期――自己受容/回復のプロセス
終章 回復のプロセスの普遍性
1 人それぞれの回復のストーリー
森田の回復のストーリー/悲嘆の仕事(喪の仕事)/薬物療法で回復した作家・内科医の体験から/アルコール依存症者の回復過程/頸椎損傷からの回復のストーリー
2 回復のプロセスの普遍性について
病因と回復/回復のストーリー
あとがき/文献
著者紹介
北西憲二1946年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。72-74年、スイスバーゼル大学精神科・うつ病研究部門に留学、79-95年慈恵医大第三病院にて森田療法の実践と研究に従事。日本女子大学人間社会学部教授を経て、現在は森田療法研究所所長。
主な著書に『「くよくよするな」といわれても……』(法研)、『実践・森田療法』(講談社)、『森田療法のすべてがわかる本』(監修・講談社)、『我執の病理』(白揚社)など。